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Brand-New Orleans 10th Anniversary Edition LP (Limited)


Brand-New Orleans 10th Anniversary Edition LP (Limited)

Ann Sally

01

A面 ① ベイズン・ストリート・ブルース
Basin Street Blues (Spencer Williams)

3:48

02

A面 ② ハニーサックル・ローズ
Honeysuckle Rose (Andy Razaf & Fats Waller)

4:30

03

A面 ③ シンス・アイ・フェル・フォー・ユー
Since I Fell For You (Buddy Johnson)

5:12

04

A面 ④ アフリカの月
(作詞:KURO 作曲:西岡恭蔵)

3:54

05

A面 ⑤ 君ほほえめば
When You’re Smiling (Mark Fisher, Joe Goodwin & Larry Shay)

3:05

06

A面 ⑥ レイジー・リヴァー
Lazy River (Sidney Arodin & Hoagy Carmichael)

3:35

07

B面 ① 麗しのジョージア・ブラウン
Sweet Georgia Brown (Ben Bernie and His Orchestra, Kenneth Casey & Maceo Pinkard)

3:52

08

B面 ② アンティル・イッツ・タイム・フォー・ユー・トゥ・ゴー
Until It’s Time For You To Go

3:29

09

B面 ③ アイ・ノウ
I Know

4:17

10

B面 ④ 遥かなるニューオリンズ
Way Down Yonder In New Orleans

3:39

11

B面 ⑤ 胸の振子
(作詞:サトウハチロー 作曲:服部良一)

4:11

12

B面 ⑥ この素晴らしき世界
What A Wonderful World (Bob Thiele & George David Weiss)

5:25

価格:¥5400 (税抜価格:¥5000)

規格番号:SONG X 030 LP

POS/JAN:4571381539305

CD発売予定:SONG X 030 として2015年11月11日(水)に発売。

iTunes他デジタル配信予定:発売の予定はありません。


製品情報

アーティスト : アン・サリー
タイトル : Brand-New Orleans 10th Anniversary Edition LP (Limited)
品番 : SONG X 030 LP
フォーマット : LP (全12曲)
+ 24bit 96kHz WAV ダウンロードコード封入
      (ボーナストラックを含む全16曲)
価格 : 5,000円 + 税
発売日 : 2015年12月9日(水)

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Produced & Arranged by Ann Sally

Ann Sally: vocal
Fredrick Sanders: piano, Hammond organ
Richard Moten: bass
Gerald French: drums
Eric Traub: tenor sax
Mark Braud: trumpet

Re-Mastered by Seigen Ono at SAIDERA MASTERING (Saidera Paradiso Ltd.)

Originally Recorded by Mark Bingham at Piety Street Recording
Tr. 02, 09, 14 were Recorded by Tim Stambaugh at Word of Mouth Studio

Originally Mixed by Mark Bingham
Originally Mastered by John Fischbach in New Orleans, Louisiana U.S.A 2004

Tr. 15, 16 were Recorded at Heart Beat Recording Studio by Tadashi Nakamura

Reissue planed by Makoto Miyanogawa (SONG X JAZZ Inc,.)

Reissue supervised by Haruhiko Iida (Ann Sally Productions)




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updated on September 29, 2015

3 年間に渡り生活した「ニューオリンズ」、音楽が染み渡る街で現地の仲間達と制作された名 作が、10 年の時を経て 10th Anniversary Edition として蘇ります。未発表音源を含む音源 をアナログマスターからリマスタリングし再登場!



出来上がったこのアルバムを聴いていると、ニューオリンズでの3年間の日々の感触が自然と思い出される。生まれて初めての海外生活、たった独りでスーツケース一つだけ持って、誰も知る人のいないニューオリンズ空港に降り立った時のこと。夜のむんとした湿気に迎えられ、車の窓から初めて見た暗い町並み。「ここにはどんな人たちが暮らし、どんな音楽が流れ、どんな出会いが待ち構えているのだろうか」、その時の私には想像もできなかったものだ。そして10年後の今、こうして音楽という形で目の前に形作られたものが手の中にある。音と音の間にはこの3年間の日々の生活の中で見たもの、触れたもの、感じたもの、聴いたもの、震えたもの、その些細な一つ一つがぎゅっと濃縮され閉じ込められているみたいだ。私という微力な一人の人間が、音楽って人間って面白いなあという気持ちに駆り立てられて、一歩一歩いろんな音楽に触れ、人と出会うことで、気が付くと他人行儀だったこの街にも親しみやすい居場所が出来つつあった。そして、ニューオリンズで生まれ育った彼らの奏でる音一つ一つには、長い歴史の重みがずっしりと刻み込まれていることを少しは感じ取れるようになった。とは言え3年間というのは、彼らの文化そのものを深く理解するには短すぎる時間だったと思う。しかしこの生活の中で少しずつ心の中に芽生え気づいたこと、それは「音楽とは、いかに生きるかということである」ということだったのではないだろうか。このことを今後世界のどこで暮らし、何をしていようとも、忘れることはないだろうし、忘れられないだろうと思う。

Ann Sally



楽曲解説 by Ann Sally 

①  Basin Street Blues (Spender Williams)
このアルバムは、かつてニューオリンズで最も栄えていた通りの一つ Basin Street をたたえる曲から幕を開けます。当時はジャズといえば今で言うヒップホップのような最も新しい音楽だったので、品よく着飾った若い人々で大変な賑わいだったそうです。現在は寂れていて昔の面影はないけれど、地元の人にとっては昔の繁栄を思わせる楽しい曲で、現在まで歌い継がれているのです。どのジャズの曲もそうだけど、歌詞もうたう人によっていろんなバリエーションがあり、人それぞれの"Basin Street Blues"があることも面白かった。

②  Honeysuckle Rose(Andy Razzaf & Fats Waller)
ベースのリチャードさんとは、地元ミュージシャンも集う場所Donna's bar and grill 月曜のBob Frenchのライブで何度か歌っているうちに親しくなりました。寡黙で温厚な人柄ですが、ベースではニューオリンズ独特の力強く弦をはじき鳴らす奏法や、パーカッションのようにベースボディーを叩いて出すリズムの独特さに魅了されました。そこで、私がニューオリンズ・レコーディングで最初に考え付いたのが、彼とのDUOでした。リチャードさんもつい最近まで、配管工事屋さんとミュージシャンという二束のわらじだったそうで、ものすごくごつごつした働きものの手をしていたことが印象的でした。彼のようにニューオリンズでは昼間は別の仕事で働き、夜はミュージシャンという人は結構多いようです。

③ Since I Fell For You (Buddy Johnson)
私の今までのCDには入れたことの無かったタイプのR&B曲です。この曲も歌う人によって切なく聞こえもするし、あばずれ女の嘆きにも聞こえたりする曲ですが、私もちょっといつもよりも熱く(?)歌ってみました。ソロパートに登場するのは、私が地元で最も注目した若手トランペット奏者のマーク・ブロード。私より少し年下なのですが、3児の父でもあり、音楽家としてもアメリカ、ヨーロッパを中心に大活躍中です。彼のトランペットを初めて聴いた時は、何だこの音? ってすごく驚きました。その不良っぽい音色とフレーズ、こんな強烈なのは聴いたことありませんでした。ビーンと張った豊かな音圧のトランペットソロをぜひ堪能してください。

④  アフリカの月(詞 :  KURO  曲 :西岡恭蔵)
ピアノのフレッドさんは太陽のように明るくて、会うたびにこの上なく親しげな人。彼のリーダー作CDで一曲ピアノソロの曲があるのですが、本人の明るさ軽やかさの裏で必死に乗り越えている重いものに触れた様な気がして、ふとフレッドさんとピアノデュオっていうのもやってみたい、とひらめいたセッションがこれでした。曲は西岡恭蔵さんの隠れた名曲で、フレッドさんに酔っ払った午前2時のニューオリンズのバーみたいなイメージでやりたいことを伝えると、ほんとに酔っ払ったみたいな動き方でピアノを弾いていたのがおちゃめでした。彼のけだるくて重い音質のピアノと、昔の思い出に浸っている酔っ払い船乗りの様子が重なって、味わい深い一曲になりました。

⑤  君ほほえめば  When Youユre Smiling(Mark Fisher, Joe Goodwin & Larry Shay)
「あなたが微笑めば、世界中があなたとともに微笑む」というこの曲は、ニューオリンズに来て知った中で一番好きな曲の一つです。私が最も敬愛する地元歌手Germaine Bazzleもこの曲をライブの度に歌っています。この人が本当に素晴らしくて! 歌う姿は生きる喜びにあふれ、ぴかぴかに輝いているのです。パフォーマーでもあると同時に音楽教師でもある彼女はリーダー作のCDも少なく、対外的にはあまり知られていない存在ですが、地元のミュージシャンは口々にフェイヴァリット・ミュージシャンとして彼女の名前を深い尊敬を込め挙げているのがこちらにも伝わります。でも、70年以上の人生を重ねた彼女がこの曲を歌うと、意外なほど軽やかなのです。本物の軽やかさというものは長くて重みのある人生を丁寧に生き抜いてきた末にやっと手に入るものなのだと、彼女の歌を聴いていると思います。私も70歳になっても歌い続けられたらなと思う曲です。

⑥  Lazy River(Sidney Arodin & Hoagy Carmichael)
ニューオリンズは、一年のうち半分が夏のようにむしむし暑いと言っても過言でない気候の地です。そんな中、人々は自然とLazyになってしまうものなんでしょうね。今の私にはよーく分かります。そんな街を流れるミシシッピ川は、よくジャズの曲の中ではLazy Mississippiと形容されています。そういえば、私が3年間働いた研究室の建物はミシシッピ川のすぐ脇にあり、しばしばこの曲を鼻歌で歌いながら、仕事で疲れた頭を休めに川沿いの道を歩いたものです。

⑦ Sweet Georgia Brown(Ben Bernie and His Orchestra, Kenneth Casey & Maceo Pinkard)
この曲に限らずですが、ジャズの歌詞解釈の幅の広さを物語るエピソードを。トランペットのマーク・ブロードに聞いたのですが、ニューオリンズのとある小学校でこの曲が取り上げられようとした時に、歌詞の意味が人によっては怪しくも解釈でき、小学生を前にした演奏ははばかられるという理由から却下された、という興味深いエピソードを聞きました。

⑧ Until Itユs Time For You To Go(Buffy Sainte - Marie)
この曲を録音していた夏のある日、この曲を録っている最中に大雨とともにスタジオの建物付近に雷が落ちました。何度か停電のため中断のアクシデントをはさんだ後に録れたテイクがこれです。雷とともに天から何か降りてきたかのように、静かで美しい演奏になりました。

⑨  I Know(T.Brooks & J.E. Jennings)
ベースとのデュオで録ったこの曲と出会ったのはメンフィスでした。ニューオリンズから車で7時間、メンフィスのサン・スタジオを訪れた時に、街の売りであるエルビスよりもはるかに強く心を惹かれた「Just Walking in The Rain」の歌声。囚人によるヴォーカルグループ、その名もプリゾネアーズでした。早速買ったCDの中で彼らのレパートリーの一曲であった「I know」と出会い
ました。二度と戻らない恋への切ない祈りを、ベースと二人でしみじみと表してみました。

⑩  Way Down Yonder In New Orleans(Henry Creamer & Layton J. Turner)
ニューオリンズの街を歩いていれば、毎日必ずどこかでいろんな人によって演奏されているような曲。ニューオリンズはこんなにいい場所なんだよ、一度はおいでね、という内容。私のいないニューオリンズの町に、今日もどこかで流れているんだろうなぁ。

⑪  胸の振子 (詞 : サトウハチロー 曲 : 服部良一)
日本を代表する作曲家のひとりである服部良一さんは、ジャズを愛しニューオリンズに憧憬の念を抱いていたそうです。そこで、ニューオリンズ地元のミュージシャンといっしょに、彼の曲を演奏したら、どんなに面白いだろうということで取り上げたのがこの曲。フレッドさんのやさしいピアノに私のうたがのって、和とも洋ともつかない、今とも昔ともつかない、なんともうるおいのある一曲に仕上がりました。

⑫  Bogalusa Strut(Sam Morgan)
ルイジアナの田舎の雰囲気をみなさんに届けたいということで、何かインスト曲で、聴くだけで笑えるようなトラディショナル曲をやりたいな、とミュージシャンと話し合っていたら、この曲にしょうと一同意見が一致した曲です。Bogalusaというのはニューオリンズから北上したところにあるルイジアナの田舎町で、そこには養豚場があって町中がぷんぷんにおうそうなんです。そんなにおうような滑稽な雰囲気に、どうぞしばし和んでいただきたいと思います。

⑬  What A Wonderful World(Bob Thiele & George David Weiss)
初めてニューオリンズに独り降り立った時、空港に流れるルイアームストロングのこの曲に出迎えられたことを覚えています。そして帰る時には、地元のミュージシャンと録音したこの曲を聴きながら飛び立ちました。この曲に始まり、この曲に終わった私の3年間。飛行機の中からきらきら揺れるニューオリンズの街の灯りを見ながら、「さようなら、また会う日まで!」。




Recording Member's profile

Fredrick Sanders :  piano & hammond organ 
Wynton Marsalisの主催するLincoln Center Jazz Orchestraや、Dirty Dozen Brass Band、Roy Hargrove(Tp)等のツアーやレコーディング参加経験もあるニューオリンズ若手実力派ピアニスト。'03年の自己名義2ndアルバム「Soul Trinity Volume One」(FreSan)では、ゆったりと進化を続けるニューオリンズのジャズ・シーンに更なる新しい流れを注ぎ込むべく意欲的な演奏を聴かせている。
(Fredrick Sanders HP http://www.fredricksanders.com)

Richard Moten : bass
今まで他のミュージシャンのレコーディングなどにはあまり参加して来なかったため、ニューオリンズ・ローカルのライヴ・シーンでは名が通っていても、街の外では知る人ぞ知る存在だったベーシスト。その実力に裏打ちされる安定したプレイに、地元主要ミュージシャンの信頼もかなり厚いものがある。地元ではBob French & Original Tuxedo Jazz Band のメンバーとして活躍。自身のバンドを率いてホテルなどにも出演中。

Gerald French : drums
力強くダイナミックなドラミングで観客をとことん楽しませるなど、エンターテイメント精神に満ちた昔ながらの地元ミュージシャン気質を受け継ぎ、所謂セカンド・ラインだけではないリズムの宝庫ニューオリンズのビートを繰り出し続ける若手ドラマー注目株。Harry Connick Jr. ビッグ・バンドのメンバーとして一時活躍。地元では人気セッション・ミュージシャンとして、Charmaine Nevilleを始め多数のローカル・アーティストと共演。

Eric Traub :  tenor sax
さまざまな有名ミュージシャンとのセッション経験もあり、トラディショナル〜モダン・ジャズ、ブラス・バンド、R&B、ファンクなど多種多様の音楽をこなすことの出来るマルチ・サックス・プレイヤーとして世界的に活躍。腕はニューオリンズのサックス奏者として間違いなくトップレベル。Dr.Johnのツアー&レコーディング・メンバー。'04年10月に来日したニューオリンズ・ジャズ〜R&Bブラス・バンドNew Orleans Nightcrawlersのメンバーでもある。

Mark Braud : trumpet
今回のメンバー中最年少だが、トラディショナルジャズの伝統を受け継ぎモダン要素も含めたプレイは、ニューオリンズにおける新たな音楽の流れを感じさせる。Harry Connick Jr. ビッグ・バンドのレギュラー・メンバー。Wynton Marsalisとの共演歴もあり、Nicholas Payton(Tp)とは幼い頃からの友人。地元有名ミュージシャンを多数輩出するNew Orleans Creative Center of Arts(NOCCA)の講師でもある。トラッドなニューオリンズ・ジャズをプレイしたリーダー・アルバム「Shake It and Break It」(Mark Braud)もある。

Mark Bingham : recording & mixing engineer
80年代にNYのアンダーグラウンド音楽シーンとも関係を持ち、ミュージシャンとして活動。'89年にソロ・アルバム「I Passed For Human」をリリース後、R.E.M.の大ヒット作「Out of Time」の制作に参加。ニューオリンズに移り住んで以来、プロデューサー、エンジニアとして数多くのローカル・アーティストのレコーディングに関わる。中でも彼の制作したCharmaine Nevilleや、The Yockamo All-Starsのアルバムは90年代のNew Orleans R&B マスターピースとも言うべき内容となっており、そこで聴けるようなナチュラルで温もりのあるサウンド・エンジニアリング手腕が高く評価されている。

John Fischbach :  mastering engineer
Stevie Wonderの名作「Songs In The Key of Life」を代表作とし、70年代から数々のメジャー・アーティストのレコードにクレジットを残すベテラン・エンジニア。アナログ・レコーディングのオーソリティとしてMark Binghamと同じスタジオに所属しているが、近年は主にマスタリング・エンジニアとしての仕事が多い。



Rough Guide to New Orleans Jazz and Culture ( text by Haruhiko Iida)

 15世紀に始まった奴隷貿易によりニューオリンズにやって来た黒人。スペイン、フランスの支配による影響。ニューオリンズは様々な歴史の中発展を遂げることになる。

アフリカから連れてこられた奴隷達はお互いの交流を制限され、独自の文化は除々に薄れはしたものの、週に一度日曜日に許されたコンゴ・スクエア(現在のルイ・アームストロング公園)での集会で踊り、歌うことで故郷への想いを開放させたと同時に、彼らの文化を継承することもできた。その奴隷達が1865年に終わった南北戦争の軍楽隊の残した楽器を手に取り、アフリカのリズムとフランス、スペインを始めとするヨーロッパの旋律を融合させたものがJazzの始まりといわれている。当初その音楽はラグタイムと呼ばれ、ピアノで主に演奏される譜面に書かれた音楽で、クラブやバーなどどこの店でも演奏され大流行した。Jazzという言葉はその後ミシシッピ川を経てシカゴに渡り、初めて新聞紙上で使われたとされている。元々そのJazzはJassと表記されていたが、その言葉に下品な意味があるためJazzに変えられた。

フランス領であった時代にフランス人と黒人の混血であるクレオールと呼ばれる人種が生まれ、それまでのアフリカから連れてこられた黒人とは違う扱いを受けることができた。彼らは白人同等に教育を受けることができ、音楽では譜面も読むことができた。彼らはクレオールだけのバンドを組み、白人達のためのパーティー等で活動していた。しかし、その後の人種隔離政策により周りの黒人達と同じ地位に落とされ、いきなり黒人として扱われるようになった彼らは、仕方なく黒人街のクラブに行き、そこで活躍しているミュージシャンの演奏を聴いたとたんそのリズムの躍動感にたいへんショックを受けたそうだ。彼らは譜面なんて読めないし、別に音楽教育を受けているわけでもないのに、それ以上の感動を聴衆に与えることができた。クレオール達はそのリズムを彼らから学ぶことで、そして黒人達はクレオール達から音楽的なことを学ぶことで、互いに刺激を与えあっていたのであろう。

1897年にオープンしたストーリービルという歓楽街はアメリカの歴史上唯一の公に認められた売春街でもあった。そこで活躍していたバディー・ボールデン(tp)がJazzを演奏したとされる最初のミュージシャン。残念ながら彼の録音は残っておらず伝説のミュージシャンであるが、彼にまつわる逸話はたくさんある。その中で特筆すべきは、彼はたいそう大きな音を奏でたらしく、ミシシッピ川の対岸からでも聞こえたそうだ。ボールデンの次のスター、キング・オリバー(tp)に憧れ、トランペットを吹き始めたルイ・アームストロング。ルイは子供の頃ストーリービルのそばで遊ぶのを育ての親のおばさんには許されていなかったが、こっそりキング・オリバーの演奏をドアの外で聴いていた。余談ではあるが、ルイも大きな音を出すことでは有名で、当時の録音技術では音を拾うのが難しかったらしく、一人だけバンドよりも遠く後ろにさがって録音したそうだ。1910年代まで栄えたストーリービルは音楽に溢れていたが、やがてアメリカの第一次世界大戦の参加により封鎖される。

ストーリービルで栄えたBasin' Street、今ではその活気をBourbon Streetに奪われ、寂しさが漂う。しかし、その通りから続くトレメ地区はかつてルイ・アームストロングを始めとするたくさんのミュージシャンを輩出した地区として今も地元では若いミュージシャン達が集る場所である。

ニューオリンズの音楽を語る上で最も重要なキーワードの一つが"セカンドライン"。言葉の語源はいろいろあるものの、今はそのリズム、ダンス、パレードのことをセカンドラインと呼ぶ。かつてアフリカでは人の生死を音楽とダンスで祝い、その文化がニューオリンズに受け継がれ、有名なJazz Funeral(葬式でバンドが出てパレードする)が文化として定着する。その他パレードは結婚式やピクニックにも登場し、その場を盛り上げる。そのリズムはアフリカやカリブの影響を受け、ダンスは西アフリカのダンスと多くの共通点を持つ。アメリカ広しといえど、このダンスを見られるのはニューオリンズだけだろう。
一年を通してほぼ毎週日曜日に行われる"セカンドライン"。大太鼓がドドンと鳴らすと、トランペットが刺さるような鋭い音を飛ばす。ブラスバンドが通りを歩きながら演奏を始めると、どこからともなく現れるたくさんの人達。時にはその数1000人ほどになることも。今も黒人街と白人街という分け隔たれた中のその黒人街で約4時間に及ぶパレードは、そこに住む人達に勇気と希望を与えているようでもある。かつて黒人は加入できる保険がなかったため、病気をした時の治療費、誰かが死亡した際に埋葬する費用などに困っていた。そこで自分達でSocial Aid and Pleasure Clubsというグループを発足し、お互いに助け合うようにした。そのいくつかあるクラブが週替わりでブラスバンドを雇ってパレードを催した。その中で、今も活動している最も古いクラブはYoung Men Olympia。1884年から現在に至るまで毎年9月の第三日曜日に大きなパレードをしている。公民権運動のパレードなんかもブラスバンドでやっていたそうだ。ブラスバンドの後ろで飛び跳ねたり、転がったりする姿は100年以上前から変わらずここに存在する。

ブラスバンドはニューオリンズの最も重要な音楽のスタイルであり、そのうねるようなリズムにスピード感溢れるホーンセクションが特徴的。Dirty Dozen Brass Bandがおそらく世界的にニューオリンズのブラスバンドを紹介した初めてのバンドだろうが、100年以上も前からEureka、Olympia、Onward、MajesticといったBrass Bandらが葬式やパレードを賑わしてきた。一時ブラスバンドは衰退しかけていたが、ニューヨークでキャブ・キャロウェイのバンドで活躍し、あのチャーリー・パーカーとも共演していたギタリスト、Danny Barkerが1965年にニューオリンズに戻ってきたのをきっかけに再び活気を得る。彼は子供たちが犯罪に手を染める姿に嘆き、音楽をさせることで子供の将来を変えられるなら、と子供を教会に集めて指導を始めた。その教会のバンドはFairview Baptist Church Bandと呼ばれ、それまでブラスバンドの仕事はほとんどがOlympia Brass Bandのものだったのを除々に彼等も担っていくようになった。その後続く若いミュージシャンが次第にブラスバンドに興味を持ち始め、活動を始める。その頃の子供達は今、ニューオリンズの第一線で活躍し、世界ツアーをするようなミュージシャンもたくさんいる。その中の一人ニコラス・ペイトン(tp)はあまりにも有名である。Danny Barkerの功績は今もずっと若いミュージシャンによって語られている。現在ニューオリンズで最も人気のあるブラスバンドは、最近結成20周年を迎えたRebirth Brass Band。彼らは伝統的なスタイルにファンクやHip Hopの要素など加えた新しいサウンドで人々を惹きつける。その他、Lil' Rascals、Hot 8、Stooges、New Birthなど10数組のブラスバンドが葬式やパレードなど、毎日どこかで演奏している。
Rebirth Brass Bandを巣立ち現在ソロとして自身のバンド、BBQ Swingersを率いるカーミット・ラフィン(tp)は街の人気者。カーミットはトラディショナルなスタイルを保ちつつ独特の手法で昔の曲をアレンジし、時にはHip Hopの要素が入っていたり、そうかと思うと、ルイ・アームストロングを訪仏させるトランペットで老若男女を魅了する。現在こうした時代の架け橋となるミュージシャンが多数活躍しており、こういうスタイルをモダン・ニューオリンズということも。

ブラスバンドと並んでニューオリンズのユニークな文化の一つ、マルディグラ・インディアンは、アップタウン、ダウンタウンそれぞれに数トライブ(部族)が存在し、かつてはそれぞれが対立しあうこともあったようだ。今でも脈々とそのダンス、チャントが受け継がれ、派手な衣装を競うかのように誇らしげに街を闊歩する。彼らのパレードで聴ける音楽は、打楽器(タンバリン、カウベル、ビール瓶等)とチャントだけによるもの。一人のビッグチーフ(酋長)の掛け声に周りの人達が応える。その昔は相手の部族が近づいて来るのをいち早く察知するようにとスパイボーイと呼ばれる人が先導し、危険を回避していたが、今ではスパイボーイは見ていると滑稽にも見える、奇妙なダンスでトライブを引っ張る。

親の代から子供へ受け継がれ、今を表現する音楽ファミリーもたくさんある。代表的な一家は、現在リンカーン・センター・ジャズ・オーケストラのウィントン(tp)のいるマルサリス・ファミリー。15歳でニューヨークのジュリアード音楽院に進みさらに飛躍の楽しみなジョナサンのいるバティースト・ファミリー。世界的に有名なファンク・バンドのネビル・ブラザーズを擁するネビル・ファミリー。そして19歳のマルチ・インストゥルメント・プレイヤーで最近はトランペットを持つことの多い、トロンボーン・ショーティー(又はトランペットスリム)ことトロイ・アンドリュース(tb & tp)のアンドリュース・ファミリー。

飯田 玄彦(滋賀県出身、1973年生まれ)
幼い頃より音楽好きな父の影響でジャズを聴き始め、音楽に親しみつつも、学生時代はもっぱらプロを目指しサッカーに没頭する。19歳で渡米し、大学留学中にジャズ発祥の地ニューオリンズを旅した際、偶然出くわしたプラスバンドパレードでのミルトン・バティースのトランペットに衝撃を受け、本格的にジャズに傾倒。トランペットを、後の世界的奏者となるニコラス・ペイトンの師匠でもあるウェンダル・ブルニアス氏に師事。滞在中アメリカの最も古い黒人街の一つ、Treme地区にあるバプティスト教会にてサンデースクール後に行われる「ジャズサービス」(ニューオリンズに独特)にて賛美歌の伴奏をするブラスバンドに参加し、数々のジャズフューネラルにも参加。そしてニューオリンズのミュージシャンらとの交流を深め、セッションに数多く参加。地元の人気ブラスファンクバンドのHot8Brass Band等で活躍。2005年帰国後は、本物のニューオリンズサウンドを届けるべく、三日月楽団、ピリカラザリガニ団等で都内を中心にライブ活動中。



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