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Cliff Hangin'


Cliff Hangin'

Eli Degibri

01

The Troll
The Troll

3:47

02

Cliff Hangin'
Cliff Hangin'

5:46

03

Even Bees Do It
Even Bees Do It

2:27

04

Kind Of Blues
Kind Of Blues

5:17

05

Suki The Cat
Suki The Cat

4:57

06

Twiced
Twiced

5:23

07

Ocean View
Ocean View

4:09

08

Shesh Besh
Shesh Besh

4:49

09

Momento Fugaz
Momento Fugaz

4:04

10

The Unknown Neighbor
The Unknown Neighbor

4:56

11

What Am I Doing Here
What Am I Doing Here

5:03

原題

Cliff Hangin'

価格:¥2700 (税抜価格:¥2500)

規格番号:SONG X 032

POS/JAN:4571381530326

CD発売予定:2015年7月予定

製品情報

アーティスト : エリ・デジブリ
タイトル : クリフ・ハンギン
品番 : SONG X 032
フォーマット : Audio CD
価格 : 2,500円 + 税
発売日 : 2015年8月26日(水)
先行発売予約(Pre-Order)

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All songs composed by Eli Degibri (Degibri Music)* *Lyrics for MomentoFugaz by ShlomoYdov

Eli Degibri : tenor saxophone, soprano saxophone #3, #7, #10
Gadi Lehavi : piano
Barak Mori : bass
Ofri Nehemya : drums
Vocal and Guitars on Momento Fugaz - Shlomo Ydov

Produced by Eli Degibri
Executive Producers - Eli Degibri and Pini Shavit
Recorded by Yaron Mohar at Pluto Studios, Tel Aviv, Israel, on December 15-16/06/2014
Assistant Engineer - Omer Zussman

Mixed and Mastered by Adrian von Ripka
at Bauer Studios, Ludwigsburg, Germany, on 27-28/10/2014
Album Photos by Haggai Cohen Milo Graphic Design by studio renee-Rinat Mizan

Eli Degibri uses Vandoren Reeds and Mouthpiece
Eli Degibri plays Selmer




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updated on May 19, 2015

 ジャズという名のパスポートを若くして手に入れ、自由となったエリ・デジブリが、国境を越え、人種を超え、時間を超えた。その彼が再び故郷イスラエルへと向かったのは、その自由を謳歌し、明日のために全身全霊を捧げる同郷たちとの演奏だ。まばゆいほどにエネルギッシュで美しさと希望に満ちあふれる最高傑作。







ビルのエントランスを抜けて、カウンターで鍵をもらい、地下へと続く階段を下りる。木製の重い扉を開けると、左右両側に小さな小部屋がずらりと並ぶ狭い廊下に出る。30ほど並ぶ小部屋の窓には小さなのぞき窓があり、その部屋の主たちの姿が微かに見える。パイプ椅子に腰かけるものや、外から見えない死角にひっそりたたずむもの、思わず目が合いにこりと挨拶してくるものもいる。サックスやトランペットの音が漏れ聴こえてくるその廊下に入ると、すぐ近くから威勢のいい音が聴こえてきた。

 『新入り』だ。明らかに周りの連中とは異質の音が聴こえてくる。近くまで行き、小さな窓を覗き込むと、上半身裸で汗まみれになって、目を閉じ、祈りを捧げるような表情で、サックスを吹き続ける男、いや高校生くらいの少年がいた。沸き上がって止まないフレーズを抑えることができず、荒削りながら激情的なまでに延々とプレイし続けている。 その途切れることのないメロディは時間がたつにつれ、その空間を支配し始め、周りの部屋の住人達はひとり、またひとりと部屋をあとにしたり、自分の楽器を横に置き、静かにその少年のプレイに聴き入り始める。しばらく時間がたち、ピタリとサックスの音が止むと、その廊下にも静寂が訪れた。タンクトップに短パン姿の少年は、何事もなかったように静かにその場を立ち去った。

 エリ・デジブリという名のその少年の正体は、数日もしないうちに住人達の間で話題となった。イスラエルから来たその少年は、メキメキと頭角を現した。ひとたび楽器を手にすると、溢れ出るフレーズを一片たりとも逃すまいと凄まじい集中力で楽器に同化し、静かで落ち着いた風貌とは裏腹に激しくプレイするその姿は、年齢に関係なく威風堂々としたオーラさえ感じさせた。ほどなくハービー・ハンコックの目に留まり、エディ・ヘンダーソン(tp)らとともに、1999年にはハービーの『ガーシュインズ・ワールド』のツアーメンバーに抜擢された。2002年には、マイルスやロリンズとも縁の深いドラマー、アル・フォスター(ds)のバンドのレギュラーを務め、世界を股にかけるジャズメンとしてのキャリアを重ねて行く。毎年定期的にツアーに出かけ、ニューヨークの老舗ヴィレッジ・ヴァンガードなどにも出演するようになった。  

 アル・フォスターは、いろんな意味で昔気質な老練なジャズドラマーだ。長老のロイ・ヘインズ、アルバート・ヒース、ジミー・コブなど、いまも現役で活躍中のモダンジャズ期の名手達よりも一世代若く、トニー・ウィリアムスやジャック・デジョネットより後の世代のドラマーとしては屈指の名手だ。ソニー・ロリンズやジョー・ヘンダーソンなどの管豪との共演歴が長く、その共演歴からしても自身のバンドでフロントを任せるサックス奏者には、相当のこだわりを持っている。前任者のクリス・ポッターに代わるサックス奏者がなかなか現われなかったところに、エリ・デジベリに白羽の矢がたった。アル・フォスターの変貌自在のドラミングに応えるだけの即興演奏家としての資質を見込まれたに違いない。昨夜の演奏は最高だったけども、今夜の演奏は最悪となるぐらいアル・フォスターのバンドは、演奏家同士のインタープレイと即興演奏のアイデアを極限まで追求する。2011年まで続いたアル・フォスター・バンドでの演奏は、ロリンズやジョー・ヘンダーソンへのエリの憧憬を満たしつつも、彼自身のプレイを別の次元へと大きく成長させるステップとなった。  
 
 アル・フォスター・バンドでの修行と並行して、ニューヨークに活動の拠点を移したエリは、アーロン・ゴールドバーグ(p)、カート・ローゼンウィンケル(g)、ジェフ・バラード(ds)、ベン・ストリート(b)らと、2003年に初リーダー作『イン・ザ・ビギニング』、2006年には『エモーショナリー・アべイラブル』と立て続けにリーダー作を発表し高い評価を受けた。ニューヨークで生み落される次世代のジャズとエリが愛してやまないヴィンテージなジャズがほどよくブレンドされた2枚は、ライヴでの激しいプレイとは別の顔ともいえる端正で知的な彼のアーティスティックな側面を凝縮した作品となった。その後、アル・フォスター・バンドで共演したピアニスト、ケヴィン・ヘイズとの神秘的なデュオ企画盤『ワン・リトル・ソング』とオルガンを迎えたニューヨークの小さなジャズクラブでのライヴ盤『ライヴ・アット・ルイス649』をリリースし、2010年にはロン・カーター(b)、ブラッド・メルドー(p)、アル・フォスター(ds)を迎えた記念碑的作品『イスラエリ・ソング』を完成させ、彼のキャリアの節目とした。  

 ベース奏者とトランぺッターの同名異人のアヴィシャイ・コーヘンやベース奏者のオメル・アヴィタルらニューヨーク・シーンで活躍するイスラエル系音楽家同様、エリもニューヨークと故郷イスラエルを頻繁に行き来するようになる。その課程で故郷イスラエルにいったん帰郷し、数多くの若き才能に巡り会い、17歳にして米国に渡った自身の過去に想いを馳せ、彼らに共演の機会を与えることを考えるようになった。録音当時16歳のピアニスト、ガディ・レハヴィと18歳のドラマー、オフリ・ネヘミアを迎えた『トゥエルヴ』は、2013年にリリースされ、コンテンポラリー・ジャズをベースに、近年少しずつ開花してきたエリの作編曲家としての個性もじっくりと楽しめる充実した一枚となっていた。
 
 そして2015年にリリースされる本作『クリフ・ハンギン』は、イスラエルの同郷の仲間達に見守られ、前作とおなじメンツでの録音となった。ブラッド・メルドー〜シャイ・マエストロの延長線上に独自の才能を開花させつつあるガディ・レハヴィのピアノ、しなやかなスウィング感が心地良いオフリ・ネヘミアのドラミング、そしてエリと同世代で同時期に米国に渡った同胞ベーシスト、バラク・モリの安定感に支えられ、もはやベテランの域に達しようとしているエリ・デジブリのテナーは、抜群の存在感を放つ。彼と同世代の多くのテナー奏者達が絶大な影響を受けるマーク・ターナーやクリス・ポッターらの影を感じさせることがほとんどないエリのプレイには、いまだ歴代の管豪達のDNAが刻まれているものの、彼のアイデンティティであるイスラエルでの生活が彼の音楽性に多くのフィードバックを与え、それが見事に彼の個性にまで昇華されてきているように感じる。前作以上に濃厚なインタープレイを交え、ユニットとしての一体感が格段に増したアンサンブルは、この数年間の積み重ねがあってこその充実感に満たされている。メランコリックで重厚なハーモニーと交錯する様々なグルーヴ、そしてクライマックスへと向けて一丸となる彼らのプレイは、荒野を駆け抜けるような疾走感を味あわせてくれる。  

 ジャズという名のパスポートを17歳にして手に入れ、海を超えたエリ・デジブリが、ベテラン達のもとで手に入れた自由は、彼を再び故郷イスラエルへと向かわせた。その地だからこそ生まれる音楽があり、それを受け入れることができるジャズは、再び次世代の音楽家達に新たなチャンスを与えようとしている。国境を越え、人種を超え、時間を超え、ジャズは無限に音楽家達の精神に宿っていく。その自由を謳歌し、明日のために全身全霊を捧げる彼らの演奏は、まばゆいほどにエネルギッシュで美しさと希望に満ちあふれている。

稲田利之