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FIREFLIES


FIREFLIES

THOMAS ENHCO

01

アウトロー
The Outlaw

7:00

02

ユア・ジャスト・ア・ゴースト
You’re Just a Ghost

6:08

03

トロイメライ
Träumerei

2:48

04

トレイン・ド・ヌイト
Train de Nuit

3:39

05

アウェイキング
Awakening (Intro)

1:53

06

ラム
Wadi Rum

7:48

07

ソウルメイト
Soulmate (To Lea)

4:21

08

モーニング・ブルース
Morning Blues

0:41

09

ラ・フネートル・エ ・ラ・プリュイ
La Fenêtre et la Pluie

6:44

10

バラッド・プール・アンネスプリ・ノクチュルヌ
Ballade Pour un Esprit Nocturne

5:10

11

ボウムボウム
Boumboumboum (Intro)

1:41

12

オープン・ユア・ドア
Open Your Door

3:41

13

コラール
Choral

2:55

原題

FIREFLIES

価格:¥2,700 (税抜価格:¥2,500)

規格番号:SONG X 021

POS/JAN:4571381530210

CD発売予定:2014年4月23日(水)

All tunes composed and arranged by Thomas Enhco
expect Träumerei by Robert Schumann (in Kinderszenen, Op. 15, No. 7)

Thomas Enhco: piano
Chris Jennings: double bass
Nicolas Charlier: drums

Produced by Pascal Pilorget and Thomas Enhco
Recorded by Benjamin Ribolet at Studio des Egreffins in November 2011 Mixed by Benjamin Ribolet at Studio Val d’Orge
Mastered by Raphaël Jonin at J Raph i.n.g.

updated on March 19, 2014

トーマス・エンコ初のセルフ・プロデュースによるオリジナル・アルバム。完成されたピアノ・テクニックと、情熱的でユニークなコンポジション、そして細部まで徹底的に作り込んだ編曲で、ピアノ・トリオ・フォーマットの限界域に臨む。これまでの録音作品とは一線を画す、『骨太』なピアノ・トリオ作品。

1988年フランスで生まれのトーマス・エンコは、3歳の時にバイオリンを始め、6歳の時にピアノを始めた。6歳から作曲を始め、9歳の頃にディディエ·ロックウッドとジャズ·フェスティバルで共演。12歳からは音楽学校でクラシックを勉強し、15歳でジャズと即興を学ぶためにパリ音楽院へ入学し、本格的にジャズの道に入った。

2010年には、フランスのジャズ界最高の栄誉との評されるジャンゴ賞で、最優秀新人賞を受賞、また同年、ティグラン・ハマシャン、バプティス・トロティニョンらが入選し世界に飛躍するきっかけを掴んだマーシャル・ソラル国際ジャズ・ピアノ・コンペティションで3位に輝いている。ヨーロッパのジャズ界の新しいスターの一人だ。まだ23歳の若さだが、すでにリーダー作をいくつもリリースしている。デビュー作は2006年の『Esquisse』。ピーター・アースキンのサポートによるこの作品には当時17歳のニコラス・シャリエも参加している。2009年には日本のレーベルより『Someday My Prince Will Come』をリリース。スタンダードを中心にシューマンやショパンを織り交ぜた。続く2011年の『The Window and The Rain』では本作のメンバーでもあるクリス・ジェニングス、ニコラス・シャリエに加え、日野照正や仙波清彦を迎えての日本録音。今のところ最新作となっているのが、2013年の『Jack & John』。ジャック・ディジョネットとジョン・パティトゥッチを迎えての強力なピアノトリオ。スタンダードを軸に「ショパンのエチュードop.10 no.6」などを取り上げている。またトーマスは2010年に「Aux Arts Citoyens」、2012年に「Les Cinq Parties du Monde」の2本の映画の音楽を担当。ピアニストとしてではなく、コンポーザーとしても評価を確立しつつある。

本作『Fireflies』はニコラス・シャリエ、クリス・ジェニングスのピアノトリオ作品で、2012年にラベル・ブルーよりリリースされた。ドラムのニコラス・シャリエもフランスジャズ界屈指の若き天才。トーマスと同じ1988年生まれ。デビューはトーマスの『Esquisse』。ディディエ・ロックウッドのバンドなどで活動するフランスを代表する若手ドラマーの一人だ。カナダ出身のベーシスト クリス・ジェニングスはグエン・レのカルテット(リタ・マルコトゥリ、ダニー・ゴットリーブ在籍)、ダファー・ユーセフ・カルテット(ティグラン・ハマシャン、マーク・ジュリアナ在籍)にも名を連ねる。フランスのジャズシーンには欠かせない存在でもある。



ホタルを意味する「Fireflies」と名付けられたアルバムは、これまでのトーマスの作品とは一線を画す。セルフ・プロデュースである本作は、シューマンのカヴァー1曲があるものも、残りの12曲は全てオリジナルである。これまでのスタンダード中心の選曲ではなく、映画音楽も手がけるコンポーザーでもあるトーマスによる彼の音楽家としてのトータルの能力がようやく形になる。オリジナル曲は彼の音楽性を見事に描き出している。シューマンやショパンなど1800年代のロマン派の楽曲を何度も演奏する彼らしく、クラシカルで美しい旋律が印象的だ。本作は作曲と編曲と即興とがすべて完璧に合致していて、全て譜面なのではと思わされるほどの完成度だ。そのために彼らは2年という時間を準備に要した。トーマスは「ハードルを高く設定した」と語る。その入念さがどう作用したのかは、このアルバムを聴けば明白だろう。たとえば、ニコラスのドラムを聴けば、彼の肉体からスティックの先までもが、トーマスの意図を形にするために動いているのがわかるだろう。すさまじいテクニックを持った天才ドラマーがブラシで囁くように、マレットで忍ぶように、丁寧に薄氷を踏むように楽曲に、ピアノに寄り添うように音を奏でる。スティックで柔らかくシンバルにタッチするニコラスの音が、トーマスが生み出す世界観に更なる奥行きをもたらす。彼らがここで鳴らすサウンドはどこかほの暗く、薄明るい。"淡い"色彩感覚が印象的だ。。それは時に幻想的ですらあるのだが、そのサウンドにはどこか感情が希薄だ。何となくまどろみながら、夢か現実かわからないまま進んでいくような本作には喜怒哀楽のようなものが感じられない。でも、もしかしたら、それは喜怒哀楽のような"感情"のさらに奥にあるものを表しているようにも思える。深層心理、イノセンス、空想、妄想。トーマスがこのトリオにより聴き手の前に前に浮かび上がらせようとしたのは、音楽に身を委ねることでしか見えない魅惑的なアナザーワールドだったのかもしれない。そしてそれはホタルの光のように儚く、そして美しい。

柳樂 光隆( Jazz The New Chapter )