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SWANSONGS


スワンソングス

チョコレート・ジーニアス

01

シー・スマイルズ
She Smiles

3:23

02

イナフ・フー・ユー
Enough For You

4:04

03

ライク・ア・ナース
Like A Nurse

2:43

04

キス・ミー
Kiss Me

2:26

05

ランプ
Lump

4:12

06

ポランスキー
Polanski

2:38

07

ハウ・アイ・ライト・マイ・ソングス
How I Write My Song

3:09

08

ミスター・ワンダフル
Mr. Wonderful

2:11

09

シット・アンド・スピン
Sit & Spin

2:38

10

ホエン・アイ・レイ・ユー・ダウン
When I Lay You Down

3:08

11

レディ・ナウ
Ready Now

4:07

原題

CHOCOLATE GENIUS INCORPORATED 『SWANSONGS』

価格:¥2,625 (税抜価格:¥2,500)

規格番号:SONG X 002

POS/JAN:4571381530029

発売日:2010年10月27日

iTunes他デジタル配信予定:配信中

作曲

チョコレート・ジーニアス
(07 のみ、アンドリュー・ヘイル、サガット・ギレイ、ドナルド・バーセルミ) -

プロデュース

チョコレート・ジーニアス + セス・アトキンス・ホーラン

演奏

ユア・ハンブル・ナレーター(チョコレート・ジーニアス) ギター、サックス、ピアノ
デイヴィッド・ピルチ ベース、ループ
マーク・リボー ギター
クリス・ブルース アクースティック/エレクトリック・ギター、キーボード
ゼラ・トンプソン & トーマス・バーレット ボーカル
ジョン・ウィックス ドラム
ヘクトル・エスピノサ コンガ
ジェイミー・ムホベラク キーボード、ギター、ピアノ、オルガン
クリス・ピアース コーラス、ハーモニカ
ダグ・ペティボン ラップ・スティール、ペダル・スティール
セス・アトキンス・ホーラン ビート

録音

セス・アトキンス・ホーラン + ボブ・ヴォーン
(一部、Cg Inc. +フランソワ・ラルドー) ロサンゼルス、ファントム・ヴォックス・スタジオ/ホバート、ウィスパー・ ファクトリー/マドリッド、ホテル・リッツ/ダカール、ダカール・ヒルトン

01 : She Smiles
David Piltch -Bass And Loops
Chris Bruce -Acoustic,Electric Guitars
Zsela Thompson -Vocals
Thomas Bartlett -Vocals Yhn -Guitar, Sax, Piano


02 : Enough For You **
John Wicks -Drums
Hector Espinosa -Congas
David Piltch -Bass
Chris Bruce -Guitar
Jamie Muhoberac -Keyboards
Marc Ribot -Guitar
Yhn -Guitar, Vocals


03 : Like A Nurse +*
Yhn -Closet Piano, Vocals


04 : Kiss Me
John Wicks -Drums
David Piltch -Bass
Chris Bruce -Elec / Acoustic Guitars
Chris Pierce -Choir Harmo
Jamie Muhoberac -Piano, Keyboards
Yhn-Acoustic Guitar, Sax , Vocals


05 : Lump
yhn -dedicated to lL.M.T


06 : Polanski
John Wicks -Drums, Percussion
Chris Bruce -Elec Guitar
Doug Pettibone -Pedal Steel
Yhn -Piano, Keys, Vocal


07 : How I Write My Song
John Wicks -Drums -Bass
David Piltch -Keyboards
Chris Bruce -Guitar
Jamie Muhoberac
Yhn -Guitar, Vocals


08 : Mr. Wonderful*+++
Yhn -Field Recording Crap Shoot Keys


09 : Sit & Spin
Yhn -Rodney Strong


10 : When I Lay You Down
John Wicks -Drums, Percussion
Seth Atkins Horan -Additional Beats
David Piltch -Bass
Chris Bruce -Guitar
Jamie Muhoberac -Keyboards
Chris Pierce -Vocals
Yhn -Guitar, Vocals


11 : Ready Now
John Wicks -Drums
David Piltch -Bass
Chris Bruce -Guitar
Jamie Muhoberac -Piano, Dying Organ


Produced By Chocolate Genius Inc. With Seth Atkins Horan
Engineered & Mixed By Seth Atkins Horan
Assisted By Bb Vaughn Additional Engineering By Cg Inc* & Francois Lardeau**

Recorded At Phantom Vox Studios / Los Angeles Whisper Factory / Hobart+ Hotel Ritz / Madrid++ Dakar Hilton+++


All Songs Written By Chocolate Genius Inc Except “How I Write My Songs” - Written With Andrew Hale / Sagat Guirey / Donald Barthelme

updated on August 23, 2010

この音楽家の20年にわたるキャリアは、ほとばしる目覚しい才能と、それと引き換えにもたらされる沈黙によって織り成されている。抑制を知らない才人は、ロック、ソウル、フォーク、ジャズの第一人者たちとの闊達な交流をこよなく愛し、同時にたえず彼らを敬愛の念を刺激してきた。マーク・リボーからデイヴィッド・バーン、フィリップ・グラスからミシェル・ンデゲオチェロ(注1)まで、ニューヨークの音楽シーンの顔役たちが、こぞって彼に無条件のリスペクトを捧げてきたように、ヨーロッパでもヴァンサン・セガール(注2)やセブ・マルテル(注3)などが賛辞を寄せる。しかしながら、チョコレート・ジーニアスことマーク・アンソニー・トンプソンは、影響力あるメディアや一般リスナーにとっては多くの場合誤解されたままだ。





5年にわたる沈黙の時間は、4作目となる最新作「スワンソングス」へと結実したが、本作は、その誤解を覆すには十分な内容だ。作者が携えたあらゆる才能を、破綻のない調和へと収束させた本作をもって、才気溢れるアメリカ人音楽家は、その才能に値するだけのスポットライトと認知を得ることになるだろう。「スワンソングス」は、年齢的な成熟にふさわしい黙想をたたえた、追憶、内省、喪失に苛まれる苦しみを探りあててゆくような作品だ。チョコレート・ジーニアスは、それを清澄なまでに美しい音と詩によってそれをくっきりと描き出してゆく。それは、ファーストアルバム以来ヴェールに包まれたままであったソングライティング、演奏、歌唱の才を、極限まで研ぎ澄ませたような作品となった。



チョコレート・ジーニアスが、変幻自在のシンガーソングライターとして注目されたのは、1998年の「Black Music」によってだった。パナマに生まれ、カリフォリニアに育ったが、彼を無二のクリエイターへとつくり変えたのは、マーク・リボー、ダヴマン、チボ・マット、ジョン・メデスキやクリス・ウッドといったオープンなマインドをもつ音楽家たちが跋扈するニューヨークだった。そこで彼は、古くはテリー・キャリアーやアーサー・リー(・ラブ)のように、同時代ではジョー・ヘンリー(注4)やマーク・アイツェル(注5)のように、「黒」でも「白」でもない、伝統に拘束されたものでも、流行に右往左往するものでもない、より普遍的なソングライティングの秘法の開発に勤しんだ。その歌は、アメリカの音楽的アイデンティティを構成するあらゆる成分と多層的に繋がっているものだった。彼は続くアルバム、2001年の「Godmusic」、2005年の「Black Yankee Rock」で、その方法論をさらに発展させ、ヴァン・ダイク・パークスの知性から、スライ・ストーンの幻視力、先祖が歌ったブルーズの乾いた激情、ニューヨーク・ジャズの歓喜、インディロックの生々しさ、さらにはソウルの官能的な呻きまでをも、自在に援用し取り込んでみせた。


鬱蒼とした音楽世界を「Black Yankee Rock」で披露した後、チョコレート・ジーニアスは、四方八方へと広がった世界を、親密なささやきの届く範囲にまで狭めていった。バラードによって構成された「スワンソング」は、言ってみれば、「Black Music」、「Godmusic」と三位一体をなす三部作の完結編とでも言うべき作品であり、これが作られることは必然でもあった。本作を貫くテーマは、彼の前半生を彩り、今は遠く離れてしまった人や場所への別れだが、このテーマが必然的に彼のソングライティングの本質を呼び覚ますこととなった。


ここに収録された11曲を録音するのに彼が必要としたのは、ロサンジェルスのスタジオでのわずか9日ばかりのセッションだった。個々の歌は、明瞭かつ痛みを伴った知性をもって彩られているが、その奥底には、人生は喪失と欠如、そして失ったものの幻影によって作り上げられているとする認識が横たわったいる。マンハッタンを遠く離れ、これまでのパートナーであったマーク・リボーでさえわずか1曲(Enough For/Of You)にしか参加していない本作で、トンプソンは、近年気脈を通じてきたパートナーたちと共演をしている。彼らのさながら重力から解放されたかのような演奏は、本作の意図を理想的なかたちで具現化している。過去の作品において、ときにエレガンスを損なう要因ともなった細かい砂利を取り除いたことで、本作での彼の歌、歌唱は曲から曲へと、目を瞠るほどの滑らかさをもって流れてゆく。美しく響き渡るブルーズ「Enough For/Of You」から、ピアノと声が愛撫しあうかのような「Like a Nurse」や「Sit & Spin」、ねじれてはうねる「Lump」、心地よく寄せてはかえす「When I Lay You Down」と「Ready Now」。あるいは、「Kiss Me」における肉感的な告白、「Mr, Wonderful」での幽玄な歌詞(電子的な残響のなかへと、亡き父の声がフェイドアウトしてゆく)など、いずれの楽曲も、ジャンルやスタイルに規制されることのない、自由なインスピレーションによってもたらされたものだ。


この数年間、チョコレート・ジーニアスは音響デザインや映画や舞台のサウンドトラックの制作を数多く手がけてきた(注6)が、その一方で、2006年にはブルース・スプリングスティーンの「Seeger Session Tour」に参加するという濃密な体験もしてきた(注7)。音響的実験と正統的なソングライティング、人工的な音響研究と魂を奥底に届く歌の探求、まさに、この両極の狭間にこそ「スワンソングス」の美を見出すことができる。このバランスの発見は、マーク・アンソニー・トンプソンの音楽に、ひとつの美しい完成形をもたらすことになった。しかし、完成をは同時に、新たなスタートでもある。本作は、輝かしい未来に向けた再生を意味しているに違いない。